Devil's Night
――これは……あの箱だ。
タイルの下には、見覚えのある箱が眠っていた。森の廃屋に住んでいたとき、カイが大切にしていた鉄の箱。魔女狩りの夜、初めて開かれるのを見たあの箱。錠前は外れ、フタにぶら下がっている。暗示による幻覚かも知れないと思っていた記憶が、この箱を目の当たりにした瞬間、全て事実だったのだと認識させられた。
おそるおそる箱を開けると、中に入っていたものは全て、はるか遠い昔の記憶のままだった。銀のナイフ、大きなカラスの羽、黄ばんだボロボロの紙、そして、契約者の血液を溜めるための金の皿。
――あの記憶は夢や催眠ではなかった……。
愕然としながら、契約書を眺めた。