Devil's Night
 
「ひどい……。ひどいよ……」


 私は同じ言葉を繰り返し、カイの猫をなじった。噛みちぎられたミカンの痛みや苦しみを想像すると、怒りと悲しみで胸が張り裂けそうだ。


「あんなかわいいミカンを食べちゃうなんて、ひど過ぎる」


 カイの表情がくもる。


「ごめん。美月。どうすれば許してくれる?」


 真剣な声で尋ねてくる。


――カイが悪いわけじゃない。


 わかってはいたけれど、飼い主であるカイに怒りをぶつけずにはいられなかった。


「許さない。だって、もうミカンは戻って来ないんだから」


「美月……」


「カイの猫なんて大嫌い!」


 私は叫んで、廃屋から駆け出した。
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