Devil's Night
 
「あ。北浦先生」


 ナースステーションの前を通りかかったとき、年配の看護師がカイに声をかけてきた。カイが足を止めると、その看護士はカウンターの向こうから小走りに駆け寄ってくる。彼女はカイの白衣の袖を引くように廊下の端へと連れて行き、声をひそめて、
「例の男がドナーの遺品を返してほしいと言ってます」
と、告げた。


「またか」


 カイがうんざりしたような顔をして舌打ちをする。


「人目につかないように屋上で待たせといてくれ」


 それだけ言って、カイは再び歩き始めた。
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