Devil's Night
 
 ドナーの子どもに家族はいなかったんだろうか、悪魔に手を貸す運び屋以外に、その子どもを弔う人間はいないのだろうか……、と気持ちが深く暗く沈みこむ。


 私は言葉を失ったまま、ひたすらカイのうしろを歩いた。


「ここだよ」


 廊下の突き当たりにある、集中治療室のドアをカイが開ける。


「免疫抑制剤を投与してるから、しばらくここで安静にしてなきゃならない。けど、経過がよければすぐに出られる」


 その通路のように狭いスペースからは、ガラス越しに無菌室の中の様子を見ることができた。その大きなはめこみガラスに額をくっつけるようにして、陽人を見る。


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