Devil's Night
 
「来月も仕事がある。来なければ、もっと苦しい目に遭わせる」


 そう言って、カイは男の横をすり抜け、私の方に歩いてきた。運び屋とのやりとりを見られたことに慌てる様子はない。ただ、私を一瞥し、ゾッとするような笑みを浮かべ、そのままドアを引いて、階段を降りて行った。


 運び屋の男は、ひとり取り残され、ぼんやりと立ち尽くしている。彼の顔に懐かしさを感じた。小学校のとき、クラスで一番やんちゃだった、ゴーストアパートの中を最もよく知っていた男の子……。


「桜木……くん?」


「え?」


 カイの背中を追う視線を私に移しただけで、男の体はふらついた。


「桜木優太くんでしょ?」
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