Devil's Night
 
 カイが目の前にしゃがみ、ひどく優しく笑って、私の手にケータイを握らせた。


「あの男に電話すれば?」


 切れ長の大きな目を細め、囁きかけてくる。


「自分のしたことを全部打ち明けて、あの男に救いを求めればいい」


 私は身ぶるいしながら首を振った。


「きっとあの男は許してくれるよ。許すことしかできない無力な男だから」


 私はただ、首を横に振り続けることしか出来ない。
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