Devil's Night
 
『美月?』


 凍った心を溶かすような、温かい声が鼓膜に届く。


「は……い……」


 体と一緒に声がふるえる。

 
『よかった。やっとつながった。美月、聞いて。やっぱり遺体は絵莉花じゃなかったよ』


「知ってる……」


『え?』 


――絵莉花は私が殺したから。


「省吾さん……。ごめんなさい……」


『美月? 何かあったの?』


「私……もう省吾さんに会えない……」


『美月? 何、バカなこと……』


 明らかに動揺している夫の声が遠くなる。
< 326 / 359 >

この作品をシェア

pagetop