Devil's Night
 
 再び廃屋に着いたときには、薄い闇があたりを包み始めていた。


 カイは建物の2階にある小さな窓から、いつものように外を見ている。
 でも、いつものぼんやり遠くを眺めるような表情ではなく、ひどく思いつめた顔。下から声をかけるのもためらわれるほどの悲しそうな目。


――私のせい? 私がカイの猫をなじったから?


「カ……」


 私が呼びかけようとしたとき、彼は無造作に何かを放り投げた。それは、白い布袋みたいに見える。
 カイの手を離れた物体は弧を描いて敷地のはるか向こうまで飛び、最後は転がってアスファルトの上に落ちた。

< 34 / 359 >

この作品をシェア

pagetop