Devil's Night
 
 だが、傷を負い、拘束された男に油断して近づく者はいないだろう。その美貌をもってしても、そう簡単に獲物は見つからないはずだ。初めて感じるカイの焦燥。


「僕が契約を更新できなかったら、おまえももう転生できない」


「わかってる……」


 転生者である私の命では、契約を更新できない。私が死んだ後に、カイが悪魔との契約不履行のために消えてしまったら、もう次はない。これが私の最後の人生……。無残なピリオド……。でも……。


「カイ。もう終わりにしよ。私を連れて行ってもいいから」


 目をつぶった私の喉を、鎖がさらに圧迫してくる。なぜか、家族4人で囲むいつもの食卓が思い出された。子どもたちの笑い声。夫の笑顔。幸せだった……。


「カイ。最後のお願い……。子どもたちと省吾さんをそっとしておいて」


 目を閉じたまま頼んだ。
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