Devil's Night
私は呼吸することも忘れて歩道に立ちつくし、厚みを失って動かなくなった袋を見つめていた。
カイが、すっと私のそばをすり抜ける。
その美しい指先が、道路の上の布袋を拾い上げ、胸に抱きしめる。とてもいとおしいものを抱くように。
私は彼の肩がふるえていることに気付いた。
――カイが泣いてる。
そのポロポロと頬をすべり落ちる涙を見て、胸がズキズキと痛み始めた。
「美月。これで許してくれる?」
息をのむほどキレイな泣き顔が、こっちを向く。
私は罪悪感に押しつぶされそうになりながら、ただじっとカイの顔を見ていることしか出来なかった。