Devil's Night
『ピンポーン……』
それから一時間ほどして、玄関のチャイムが鳴った。
『訪問者が誰か予想がついても、すぐに玄関のドアを開けてはいけない。インターホンで相手を確認するまでは』
それは、アメリカに住み始めてすぐ、夫から与えられたルール。
キッチンの引き出しに入れられた、女性でも扱えるハンドガンと手錠を見せられ、そのルールを説明されたとき、ここは日本じゃないんだと痛感した。
「ただいま」
私がリビングのインターホンに手を伸ばす前に、玄関のドアが開き、長い廊下の先に夫の笑顔が見えた。
「パパ!」
絵莉花がソファーから飛び立つようにして、玄関へ駆けていき、同じように、夫の声に反応して私の腕から身を乗り出す陽人を床におろしてやる。