Devil's Night
 
 ふたりの子どもたちを両腕に抱え、夫がリビングに入ってくる。


「ただいま、美月」


 夫は、私のことも名前で呼んでくれる。母親としてではなく、ひとりの女性として扱ってくれることが嬉しい。だから、私も彼を『パパ』とは呼ばない。


「おかえりなさい、省吾さん」


 こうして見つめ合う一瞬が、今でも照れくさい。きっと私は、困ったような笑みを浮かべているに違いない。

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