Devil's Night
 
「今日はメルカードまで足を伸ばそうか」


 夫が陽人をチャイルドシートに乗せながら、私を振り返った。


 その笑顔に、初めて微笑みを交わした遠い夏の日の気持ちがよみがえって、今でもドキドキする。それを親友の香織に言ったら『異常だわ。中学生でも1年以上付き合ったらそんなのないって』と笑われたっけ。


「やった! メルカードのオルゴール屋さん、行きたい!」


 私が返事をするより先に、絵莉花が声を上げる。


 その大型ショッピングセンターには彼女の好きな専門店がいくつも入て、古い大きなパイプオルガン式のオルゴールを店頭に置いている店もそのひとつだ。
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