Devil's Night
「カイ。ごめんね。ブルーのこと……」
さかさまになってゆらめく異国の街らしき景色を眺め、私は泣きそうになりながら謝った。
「美月のせいじゃないよ。僕が過去の美月じゃなく、今の美月を選んだだけだ」
とても優しい口調でカイは言ったが、意味がわからない。
「今の私?」
聞き返したけれど、カイは曖昧に微笑んでいるだけだった。
それから中学を卒業する間際まで、塾のない日はほとんど毎日のようにゴーストアパートに行き、カイに会った。
彼は外国の絵本を見せてくれたり、知らないゲームを教えてくれたりした。カイ自身はミステリアスなものに惹かれるらしく、オーパーツやバミューダ海域、Xファイルに関する資料を集めている。そして、世界史にも興味があるのか、外国の街の話や歴史をたくさん教えてくれた。あたかも、その時代、その場所に住んでいたかのように詳しく。
なのに、相変わらず自分のことはしゃべらない。
私が期せずして彼の素性を知ったのは、幼なじみの香織と一緒に書店へ行ったときのことだった。