Devil's Night
私が名字を知っていることに驚く様子はなく、そんなことは本当にどうでもいいといった感じだ。
「美月。膝枕して」
その言葉に、そんなことを言われたことがない私はドキドキする。
「い……いけど……」
目を閉じたままのカイが、寝返りをうつようにして、私の膝に頭を乗せた。やっぱり少し緊張する。
撫でることもためらわれるほど美しいサラサラした艶のある髪の毛が、凛とした眉にかかっていた。長くて濃いまつ毛、まっすぐにとおった鼻すじ、そして、淡い桜色の唇。初めて会った時は北欧あたりに住む人種のように見えた顔が、今は見慣れたせいか、少しエキゾチックな顔をした少年という印象に変わっている。
とは言え、ため息が出るほど整った横顔に変わりはなく、香織が声をかけるのもおそれ多いと言っていたことを思い出す。