Devil's Night
「ブルー、おいで」
透明感のある少年の声で、毛布の方へ戻っていくグレーの猫。その様子に気をとられる私に向かって、少年が
「ここから、やり直してみようね」
と、眉間にシワを刻んだまま微かに笑う。
――やり直す? 初めて会った少年が、私に投げかけてきた言葉の意味がわからない。
戸惑っているうちに、少年がゆっくりと半身を起こした。
「う……」
整った顔が苦しげにゆがみ、形のいい唇から低くうめくような声がもれる。
「だ、大丈夫?」
咄嗟に私は中に入り、少年に近づきながら聞いていた。
「ど、どこか痛い?」
彼は毛布を羽織っている体を丸めるように、前かがみになっている。その毛布の中をのぞきこんで、息が止まりそうになった。
「………!」
血まみれのシャツ。いや、それはよく見ると、シャツではなく、理科の先生が着ているような白衣で、少年が押さえているみぞおちの辺りに、割れたビール瓶が刺さっている。
『ウソ……』
あまりの衝撃に、膝が砕けそうになった。