7日間の恋
『結衣ちゃん?笑顔が…堅い』
津川さんは目を細める。
そして私は近くにあった鏡を見る。
………うーん?
いつもと変わらない気がするんだけどなぁ…
『違うよ、違う。
俺が言ってるのはそういうことじゃない。
うまく説明できないけど…
患者さん、みんな敏感だよ?
心の中、きっとバレてる。
あぁこの先生は大変なんだろうな、って。
いろんなこと悩んでるんだろうな、って。
だから迷惑かけちゃいけないな、って。
我慢しなきゃな、って。
俺の言いたいこと、分かる?』
コクリと頷いた。
リハビリで大切なのは患者さんと気持ちを通わすこと。
痛いというのに無理矢理曲げるのは傲慢。
それに、今の状態よりひどくする場合もある。
患者さんは遠慮なく、言わなくちゃいけない。
『痛い』って。
でも今の私じゃ、言ってはもらえない。
こんな頼りない先生に患者さんは甘えられない。
私ってば、何…やってるんだろう。
稲葉さんのことも
莉巳ちゃんのことも
患者さんには関係ない。
私は今、診ている患者さんに集中しなくちゃいけない。
ダメだな…私。
1ヶ月やってきたのにまだ、何も分かってなかった。