俺の先輩自称殿−本当のお名前なんですか?‐
だって、俺だって知っていた。

この学校で撮った写真、どれもこれも左後ろにきらっと光る白い影が映るんだ。
それってもう、俺が入部してからずっとだし。
少なくとも写真部なら全員が把握してることだと……思い込んでいた。

まぁ、あの白い影が「自爆霊」かどうかは知ったこっちゃないけど。

ししししし知らなかったなんて。
あんなに暇さえあれば自分の写真ばっかりうっとり眺めている、写真部部長が、そのことを知らなかったなんて。

どんだけ自分しか見てないんだろう、この人は。

あまりにものナルシストぶりに薄ら寒ささえ感じてしまった。
俺はぶるっと身震いする。
もちろん、額に汗をかきながら。

「へ、へぇ」

頭の中にある言語、全部動員したはずなのに口から出てきた言葉は喘ぐような相槌だけ。
そんくらい、衝撃を受けたんだ。
ありえねえ。

「絶対これだよな、自爆霊って。
巫女ちゃんのところに持っていこう」

さっと殿が立ち上がる。
その姿だけは颯爽としていて見惚れてしまうほどだ。姿だけは。

「念のため聞いてみますけど、何のために?」

は?と、小ばかにした顔で殿が一瞬足を止めて振り向いた。

「この自爆霊に俺がかっこいいかどうか聞いてもらうために決まってんだろ?
他に何があると思ってんの?バナナって変わってるねぇ」

はあああああ?

俺と殿、どっちが変わってるか、全校生徒に投票して決めて頂きたい。
あ、そのときはあくまでもルックス抜きで、公正な投票をお願いします。
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