俺の先輩自称殿−本当のお名前なんですか?‐
だいたい、風水というのは、キッチンをきれいにして金運をあげたり、部屋に花を飾ってよい運気を取り込んだりするもんなんだよ!風水の解釈を根本的に間違えているんじゃないですか、殿。

ちっちっち、と、再び殿が見事な舌打ちをしながら、俺の目の前で人差し指を左右に振った。その華麗なる仕草には、もう突っ込むまい。

「バカだなぁ、バナナ。それでも増えるから風水なんじゃないか」

ふふっと、余裕ぶっこいた態度で微笑まれてますけど。

ち、違いますよ?
風水はマジックなんかじゃないですよ?

「と……とにかく僕は忙しいんだ。部活動に専念している余裕はない。
悪いが部員後1名は他のヤツを当たってくれ」

俺たちの会話をぶったぎって、会長が頭を下げる。
きぃ、と、殿の瞳がいまいましそうな光を帯びた。綺麗な顔をしているだけに、怖い顔には凄みが出る。

「忙しいって言ってるヤツは大抵無能なんだよっ、覚えとけ、ボケがぁああっ。
俺なんかなぁ『俺に出来ないことはない』が信条なんだ!お前も生徒会長ならそのくらいの気迫を背負って生きてみろ!」

偉そうに説教してますが、先ほどの自分の発言と大きく矛盾していることにはお気づきでしょうか、殿?

ふぅ、と、殿が諦めたようにテーブルに着いた。
いや、あまりに自然にそうしたので、その不自然さにすら気づかなかったほどだ。


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