俺の先輩自称殿−本当のお名前なんですか?‐
「さすが、ドウちゃんの幼馴染だわ。
仕事早いわねぇ」

ぽきり、ぽきりと巫女さんがその細い指を鳴らす。

……え?
鳴らす?

「あ、昨日のバナナだ」

そんな俺たちの姿を見咎めたのか、剣道さんが近づいてきた。
昨日のジーンズにトレーナー姿のほうがずっと似合っている、といったら殴り殺されるだろうか。
もちろん、ちょっと気崩した制服姿もそれはそれでオツなんだけど。

「殿が生徒会長で待ってるんだって」

「へぇ、やっぱり美人の頼みには弱いわねぇ、アイツ」

「そんなはずないわよ、ドウちゃん。
あの人、自分の顔しか見てないもの。多分、私の目を見ているときですら、私の目に映っている自分しか見てないわ」

冷静な顔で、巫女さんが言う。
おお、鋭い洞察力!

俺たちはそんな軽口を叩きながら生徒会室へと向かった。

……っていうか、昼休みからずっと、あの部屋で俺を待っているんだろうか……
そんな大人しい人じゃない。
いや、生徒会室にあった鏡に見蕩れていてくれたら、2時間くらいあっという間なんだろうけど。
今はそれを願うしかない。

そんな人、嫌だけど。

矛盾した感情が胸の中で渦巻いて、生徒会室に近づくに連れて、俺の心臓はぎゅぎゅっと痛くなってきた。

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