俺の先輩自称殿−本当のお名前なんですか?‐
「あの……何を囁かれたんですか?」
俺は気になっていたことを聞いてみた。
「殿の本名」
さらりと言う。
幼馴染だから本名くらい知っていて当然か。
そういえば、殿の本名ってなんていうんだろう。
入部した最初の日に、腰に片手を当て、びしっと顔の前にもう片手の指を突き出して『俺を殿と呼びたまえ』と言われて以降、本名を聞く機会もなくずっと殿と呼び続けていたが、言われて見たらあの人にだって本名くらいあるよなぁ。
昼間、生徒会長から本名をかけといわれて、尋常でないくらいに怯えていた殿の姿が脳裏をよぎった。まぁ、あの人の尋常な姿なんて見たことないけど。
「あの、本名、なんていうんですか?」
「ごめんね、今それどころじゃないのよ」
剣道さんがさらりと流す。
目が真剣でこれ以上突っ込めない。
「アイツが本名を言われてうろたえなかったことなんて、今まで一度もないの。
『名前』とか『本名』って言葉を出されただけでもアウトなんだから」
ものすっごく普通の言葉がNGワードなんですね、殿……。
少しだけ哀れに思いながら、俺は黙って話の続きを聞く。
俺は気になっていたことを聞いてみた。
「殿の本名」
さらりと言う。
幼馴染だから本名くらい知っていて当然か。
そういえば、殿の本名ってなんていうんだろう。
入部した最初の日に、腰に片手を当て、びしっと顔の前にもう片手の指を突き出して『俺を殿と呼びたまえ』と言われて以降、本名を聞く機会もなくずっと殿と呼び続けていたが、言われて見たらあの人にだって本名くらいあるよなぁ。
昼間、生徒会長から本名をかけといわれて、尋常でないくらいに怯えていた殿の姿が脳裏をよぎった。まぁ、あの人の尋常な姿なんて見たことないけど。
「あの、本名、なんていうんですか?」
「ごめんね、今それどころじゃないのよ」
剣道さんがさらりと流す。
目が真剣でこれ以上突っ込めない。
「アイツが本名を言われてうろたえなかったことなんて、今まで一度もないの。
『名前』とか『本名』って言葉を出されただけでもアウトなんだから」
ものすっごく普通の言葉がNGワードなんですね、殿……。
少しだけ哀れに思いながら、俺は黙って話の続きを聞く。