僕の顧問自称殿-そろそろお名前教えてください!-
「巫女ちゃん、痛いじゃないか。
頭だったからまだ良かったものの、顔だったら世界中の女の子を悲劇のどん底に落としてしまうところだったぞ」

 殿の顔に傷をつけると、とんでもないことになりそうだ。もちろん殿自身が。
 これほどまでのご自愛ぶりだと、蚊に刺されようものなら発狂してしまうだろう。どうでもいいことだけど。

 そんなことを考えていたら殿、僕とその……見目麗しいお方の間に立ちふさがった。
 殿の無駄な長身のせいで、見えないじゃないか。 
 お前の姿勢のいい背中なんか見たくないんだ。そんな短い胴を僕に見せつけて僕に対する嫌がらせか? 自慢か?

 という思いから、向かい合う美男美女の横に立つ。

「殿、遅かったわね。今までどこにいたの?」

「巫女ちゃんの心の中にずっといたじゃないか」

「そうなの? 殿って影薄いわね」

「いくら褒められなれてる俺でも、巫女ちゃんに褒められるとさすがに照れるなあ」

「性格はくどいのに、どうして影は薄いのかしら」

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。俺の心は巫女ちゃんだけのものだから」

「そうね」

「そうさ」

 終始、極上の微笑みで会話が繰り広げられた後、二人は足並みを揃えて部室の中に入っていった。
 
 な。

 なんだったんだ? 今の会話は……。
 かみ合っていたのか? 全然かみ合ってなかったよね?

 なのにどうして、会話がしっかりと締めくくられたんだ。

 駄目だ、頭が混乱する。もしかして、今の会話がわからない僕がおかしかったりするのか?
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