僕の顧問自称殿-そろそろお名前教えてください!-
 そして、巫女さんのうちに着いたわけだが……。

 過程をすっ飛ばしすぎじゃないかって?
 ああっ!! お願いだから聞かないでくれ。

 鳩に3歩連続でフンをかけられたり、犬のフンを3歩連続で踏んだり、3歩連続で浅い落とし穴にハマったりは、今まで、まあそれなりにあった僕だ。

 が、しかし、3歩ごとに指差されて笑われたというのは初体験だ。できれば、一生避けて通りたい体験だった。

 他人のフリをしようと殿と距離をとれば、「達筆ぅ~!!」とその美声を取り巻き(殿の中では。実際は失笑する通行人)にアピールしようとしてか、三軒半は筒抜ける大声を出すのだ。

「やっぱり、今日のファッションはサイコーだね。俺、注目の的だよ。
でも、達筆、真似したって無駄だぞ。
このファッションは、言わば引き立て役。俺の留まるところを知らない美貌を引き立てる為の――(以下割愛)」

 確かに通行人の注目を一身に浴びていた。当然と言えば当然だろう。

 全身スパンコールとラメをちりばめたオーロラ色のピタピタスーツに揺れるミョウガ。それを纏った超絶美男子が、フンフン鼻を鳴らしながらスキップしているのだから。

 それはもう、くぎづけになる。

 このまま、R-1審査会場へ誘導したほうがいいのではないか、という考えがめぐった。この殿だったら、格好だけで本線に通過するだろう。それぐらいのクオリティなのだ。

 僕は、離れて歩く事も、開き直って仲良さげに談笑しながら歩くことも出来ず、ただ影を極限まで薄くすることしかできなかった。

 結びが甘かったのか、ヘンゼルとグレーテルよろしく、殿の通った後にミョウガの道しるべが出来ていたことには、どうか触れないでほしい。

< 30 / 55 >

この作品をシェア

pagetop