僕の顧問自称殿-そろそろお名前教えてください!-
 びゅん!
 空を切る音を耳にした瞬間、頬にチッと熱が走った。

 びゅん! びゅん!

 我に返って、部屋を見回せば。

 ええええ!? 弓矢? 室内で!?

 思いっきりゲンを引き今にも矢を放ちそうな雰囲気で。

 矢じり、こっち向いてますけど!?
 あれ刺さったら、死にますよね? 絶命必死ですよね?

「いやあ、バナナ、久しぶりだなあ。
相変わらず見苦しいな、お前」

 壁や障子に矢が突き刺さりまくってる中、びっくりするぐらい和やかな声が聞こえてきた。

 殿、ご乱心?
 壁に向かって喋ってますよ?
 現実逃避したい気持ちはわかりますけど、ちょっと、巫女さんを止めてください!!

「うわっ!!」
 
 すんでのところで弓矢を避けた僕は、驚愕の事実を目の当たりにした。

 なんと、巫女さん、ぎゅうっと目をつぶっているではないか。

 勘? 勘で、矢、放っちゃってるの?

 あんまり考えたくないけど、矢、僕の方にばっかり飛んできてない?

「そんなに俺の美貌を見たかったのか。
生き返ったなら生き返ったって教えてくれよ、バナナ。
俺てっきり、バナナの皮に滑って死んだままかと思ってたよ、アハハハハ」

 殿、笑ってんじゃねえええ!!
 空気読めよ! つうか、色々と気づけ!!
 
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