僕の顧問自称殿-そろそろお名前教えてください!-
 巫女さんって、もしかしてアレなのか? こんなに美しいのにアレだったりするのか? 部室の禁止ワード『バ』の罵ったりするほうだったりするのか?

「ねえねえ、巫女ちゃん、そういやさっき、バナナがひょっこり現れてさ。
白い着物で額に白い三角つけててさあ、変な格好だよな」

 ここで、口を挟むんじゃねえ!! バカ(アレ)殿!!
 今、すっごい核心的な話してんだろうがよ!! 空気読め!!
 白い着物? 普通だろーが、てめえのレスリングに比べれば!!
 てめえは、バカ(アレ)殿らしく部屋の隅でドウラン塗ってろ!!

 は!! つい取り乱してしまった……。

「バナナ? なにそれ?」

 巫女さん、小首をかしげるさまも可愛らしい……。こんなに可愛いのにアレなんだろうか?
 実際そんなものなのかもしれないな、器量のいい人って。だってほら、生き証人がいるじゃん。自分のこと『殿』とか名乗ってるやつが。

「あいつだよお、バナナの皮に滑って死んだデブ。一緒に風水研究部立ち上げたじゃん」

「そうだったかしら?」

「いた……よ?」

「そんな変な名前の人なんていたかしら?」

「いた……よな? あれ? そんなやつ初めからいなかったような気がしてきたぞ」

「また殿の妄想じゃない?」

「そうか」

「そうよ」

 え? またこのパターン?

 本当にそれ、殿の妄想なの?
 なんかすっごい大切なことのような気がするけど。

 ほら、部室内での禁止語句は『バ』から始まるものでしょ?
 僕……、無性にバナナ食べたくなってたし。
 殿、『デブ』って言ったよね? 僕、半端じゃない量の汗だってかいてた。
 
 あれ? 今は全然バナナ食べたくないぞ。額もカラっとしたもんだ。
 
 瞬間、パズルのピースがひとつに繋がった。

 もしや!!
 ……閃いたはいいけれど、これ本当だとしたら、物凄くヤダ。
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