僕の顧問自称殿-そろそろお名前教えてください!-
 殿と巫女さんのノリだと、このまま放置されて永遠に蒸し返されないまま迷宮入りしてしまいそうだ。
 もう、なんだかそれでもいい気がするが、もし、僕の考えが正しいとすれば、僕のように不憫な人が増えてしまう。それは、あまりにも忍びない。

 僕は、腕に力を入れた。思いっきり。
 すると、手ごたえがあった。腕は動く。
 手のひらを床に引いてある和紙に押し付けて、軋む体を起こし上げた。

「達筆君、もう平気なの?」

 やわらかな表情の巫女さんの後ろで、軽い舌打ちが聞こえたのは気のせいだろう。

 僕は、巫女さんをしっかりと見据えた。
 ここだけの話、あまりの美貌に半分意識が飛びかけたというのは、いいから聞かなかったことにしてくれ。

「巫女さん、除霊ってどういう事ですか?」

「霊を取り除くことよ」

 ……まあ、そうなんだが。

「アハハ。違うよ、巫女ちゃん。達筆が聞きたいのは、俺が霊から見てもイケてる理由だよ」

 わかった、殿。この話が終わったら、耳鼻科連れて行ってあげますから、ちょっと邪魔しないでいただけます?

 僕は、精一杯の冷ややか視線を殿に送りつつ、こいつは無視しようと心に決めた。

「何から霊を取り除いたんですか?」

 僕の問いに、巫女さんは顔を綻ばせた。

「達筆君」

 そんな嬉しそうな顔で言わなくてもいいじゃないですか……。
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