僕の顧問自称殿-そろそろお名前教えてください!-
「呪文で一番しつこそうな霊を達筆君の体から追い出すことはできたのだけど、なかなか霊に破魔矢があたらなくて」

 僕は耳を疑った。
 今、なかなか当たらなかったって言いましたよね?

 いや、全く当てる気無かったでしょ……。

 数打ちゃあたるって言葉、あれ嘘だ。この部屋を改めて見回してみると、戦国時代のちょっとした戦後ばりに矢がいたるところに突き刺さってます。
 はっきりいって、ざっと100本くだらない。

「でも、達筆くんが書いてくれた『悪霊退散』の呪符のお陰で退治できたわ」

 ……あれ、ラブレターなんですけど、とは言い出しにくい雰囲気だぞ。
 もういいや、呪符で。僕は『親愛なる巫女さんへ』なんて書いてない。『悪霊退散』って書いたんだ――ってことでいいです……。

 というか、どうして愛を綴ったやつで、霊が退治できたんだ?
 ちょっと、残念な頭の持ち主だったんだな、僕に取り付いていた霊。

「でも、あの霊、ちょっと変だったのよ。
『どうしてバナナをお供えしてくれないんだ、俺はバナナの皮に滑って死んだけどバナナは好きなんだぞ』って怒ってたのよ」

「アハハ、変な霊だなあ。さっき俺のところに来たバナナって後輩にてる……あ、その件は俺の趣味の妄想だったか」

 それだよ、それーーーーーー!!
 どうして、この二人はその霊が同一人物、もとい同一霊だと認識できないんだ!?

 はあ。コナン君が駆けつけてくれる気配もないし、僕の頭の中だけで整理しよう……。

 巫女さんが(寧ろ僕自ら)除霊した霊は、バナナ好きの、バナナの皮で滑って転んで死んだ霊で、しかも、殿の後輩で『バナナ』。

 殿の後輩ってなると、部室で『バナナ』が禁句になるっていうのも頷ける。
 無くなった後輩の名前を口に出しにくくなるのは、当然といえば当然かもしれない。

 それにしても『バ』、留学生じゃなくて、『バナナ』だったのか。
 ものすっごい普遍的な禁止ワードじゃないか。遠足の話なんかしたら真っ先に出てきそうだ。
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