こんな物語
 ラナルフは椅子に腰掛け、もう一度深い溜息を落とす。
 溜息を吐いたところで問題は解決しないのだが、リーシャと契約を結んだとは言え既にそれさえも後悔し始めているのだ。
 やはり、今後が面倒でも母の気に入っていた大国の王女と婚約を結ぶべきだったのではないか、と。そうするとその王女によって政務を邪魔され、自分だけの時間を削られるをえなくなるのだが、これからもリーシャにことある度に振り回され、そして母にリーシャを認めるよう働きかけなくてはいけなくなるのかと思うと、頭が痛くなる話だった。


 「ラナルフ、お前が本当にスウェイルの小娘を愛しているというなら、認めてあげましょう。

 ただし、私が認めない限りスウェイルの小娘はお前の婚約者止まりなのをよく覚えておきなさいね」


 婚約者候補のいる国へと次々に外交と称して訪問させてくる母に、堪らなくなってリーシャと婚約したいと告げた時に、言った母の言葉を思い出して額をおさえる。
 無論、自分の気持ちを押し付けて政務を邪魔しにくる王女たちよりずっとマシだという理由で選んだリーシャのことを愛しているわけもなく、そうなると母に認めさせるのも一苦労というものだ。
 リーシャ自身は何をされようと、けろりとしていそうだが、認めさせない限りお気に入りの王女達とお見合いでもさせてくるだろう母を思えば頭が痛くなる一方。
 どうしてこうも自分は女運が無いのだろうか、とラナルフは今日何度目か解らない溜息を吐いた。
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