こんな物語
 リーシャとラナルフは広間に入ると国王、女王の両隣にある席へとそれぞれ別れて座る。今回の主賓は自分たちであるから、この国の王子達やその婚約者は端へと追いやられて座ることとなる。
 座るとすぐに国王の話が始まるが、賓客たちの中で彼の話を聞いているのはスウェイルの国民と礼儀正しい者たちだけ。グレイリーという大国の第二王子である自分が見たくて来る隣国の賓客が多いらしく、その自分と婚約するというリーシャに品定めするような眼差しを向けるものが多い。所詮、小国が大国と婚約するときにはそんなものだろうと思うが、彼女の場合はどう思うのだろうか、とリーシャを一瞥すると扉の前で宣言した通りに完璧な王女を演じたまま、笑んで座っていた。

 グレイリーという大国のパーティーと比べること事態が間違っているのだが、それを差し引いてもスウェイルのパーティーは華があるとは言い難い。スウェイル国の財政力を考えれば想像するに難くないが、それでも他国からの賓客たちはリーシャ自身のことも含め、このパーティーの規模についても囁いていた。
 そうこう考えている間に国王の話は終わり、会場内には音楽が流れて周りは踊り始めたり雑談をしていたりと様々であった。


 席を立ってすぐに向かうのはリーシャの元。
 恭しく礼をしてリーシャの手を取り、彼女を見上げて尋ねる。


 「一曲、お相手いただけますか?」

 
 目に映ったのはそれこそ、普段では見られないような愛らしい笑みを浮かべたリーシャだった。
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