こんな物語
 きっぱりと否定したリーシャにアスタは苦笑する。

 
 「ああ、そういえば、ラナルフはちゃんと寝てる?」

 「相変わらず、人の話を聞かないな。
 まあ、毎日一時間程は寝ているみたいだけど、あのままじゃ倒れるだろうね」

 「倒れるだろうねって、心配じゃないのかい?」

 
 何ともなしにリーシャが言うと、アスタは驚いたように目を丸くする。
 そんなアスタを一瞥してリーシャは手を動かしながら答える。


 「一度痛い目を見ないと気付かないだろう?」

 「って、まさか倒れるまで放っておくつもりかい?」

 「忠告なら毎日してる。手伝いが必要かも聞いた。それでも一人で遣ると決めたんだから、私が口を出すことじゃない」

 「リーシャは後悔しないの?」

 「後悔するようなことを、私がすると思う?」


 そう尋ねるリーシャにアスタはただ肩を竦めるだけだった。
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