*youth*
すると、広さんのケータイが鳴った。
「もしもし?あっ?来てねぇよ。今、病院。え?幸ちゃんのこと?居るよ隣に。」
誰と話してんだろう?
広さんが私にケータイを差し出す。
「幸ちゃんに代わってほしいって。」
「誰ですか?」
「磯山」
いそやま…さん??
「野球部マネージャー。」
急に体が固まった。
蘇る記憶。
突然、寒気が…
私は恐る恐る広さんからケータイを受け取り電話に出た。
『もしもし?野球部マネージャーの磯山です。私のこと覚えてる?』
「はい…。」
思い出したくないけれど…。
『今、テレビで中継やってないでしょ?』
「はい…。」
『やっぱり…ラジオでもやってないからね…。』
「はい…。」
さっきから“はい”しか言ってないような…。
でも、なぜか電話の向こうのマネージャーさんの声は優しく聞こえた。
『ハンズフリーボタン押して。』
「はい?」
『いいから。ケータイのハンズフリーボタンを押して、
広くんにも聞こえるようにして。』
私は言われたとおりに通話ボタンを押して、
ケータイを耳から離した。
『武田くん聴こえる?』
「おう!」
『じゃあ、今から私が実況中継するわね。』
「はぁ~い!」
広さんは無邪気に返事をした。
『今、2-0で蒼里学院がリード。そして、4回の表。星が丘学園の攻撃。
あっ、今、攻撃終わったわ。次、蒼里学院の攻撃よ。』
奥から悠ちゃんの「しまってこー!」と言う声が聞こえた。
悠ちゃん…
ひぃちゃん…
どっちも頑張って…!