オレンジ色の奇跡
◆……
少しだけ口元が緩んでいるのは気のせいなのか……?
「祥也もだけど千紗とは幼なじみなんだよ。
よく分かんねぇけど千紗、男いるみてぇだしな。……相川は彼氏」
「いないですよ?」
「何笑ってんだよ!」
よく分かんねぇけど相川が笑ってる。
でも、相川が笑えば俺も釣られて笑っちまう。
「そういえばさ、今日コクられたんだろ?」
今なら聞ける、そう思った。
相川は、少し驚いた感じで目を見開いていたが、すぐに笑顔に戻った。
「…あぁ……はい。なんか、よく知らない後輩くんに。断りましたけどね?でも……」
ってなんだっ?
やべぇ……。
悪いことしか思い浮かばねぇ…。
相川は、紅茶の入ったマグカップを両手で覆う。
「誰かに自分の気持ちを伝えるって、なかなかできないですよね。あたしだったら……できないかも……」
相川は、少し冷めたであろう紅茶を口に少し含んだ。
あぁ、本当だな。
こうして、今、目の前にいる相川に気持ちを伝えることができないこの歯痒さ。
伝えたいって思ってるはずなのに怖くて『好き』と言えない自分が情けなくてしょうがない。
それでも、俺のことを少しでも知ってほしくて……。
「相川……。俺……」
何、言おうとしてんだよ。
今言ったとしても気まずくなるだけだろ……。