オレンジ色の奇跡




『もしかして、考えてくれてんの?』

「えっ……?」

 声がする方を見ればドアに寄りかかっているジョンの姿。

「あっ………いや、その」

 あたしは、まともにジョンを見ることができなくて視線を机に向ける。

『ふっ……』

 ジョンは軽く鼻で笑いあたしの隣の席に座った。

『怒ってないんだ?みんなの前でキスしたのに』

『別に、怒ってない…』

『アイツの前だったのに?』

 アイツとは、岩佐先輩のことだろう。

 見られてなんとも思わないはずがない……。

 でも…………。

『あたしが、勝手に想ってるだけだから』

 そう………。
 片想いだから。

『じゃぁ、なんでとっとと俺を振らないんだよ?』

 それは、あたしにジョンを振る勇気がないから。

 あたしは、今までみたいな関係ではなくなるのが怖いのかもしれない。

『舞希は、俺のこと兄貴としか見てないんだろ?それじゃ、振る理由にならないのか?スパッと振ってくれよ。
……………そうじゃないと期待しちまうだろ?』

『っ!!!』

 あたしの気持ちが定まらないことで、さらにジョンを傷つけている。

 あたしは、これ以上期待させてはいけない。

 恋をするひとりの女として、気持ちは痛いほど分かるから。



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