オレンジ色の奇跡
◆……
こんなにも近くにいるのに、なんだかキョリがあるような気がして俺は、離れた相川の身体を引き寄せ強く抱きしめる。
相川のシャンプーの匂いが俺の鼻をくすぐれば背中に温かさを感じ、ふと目線を自分のわき腹へ向ければ細い腕が俺をぎゅうっと包んでいた。
相川も、俺と同じことを思ってくれてるのかと自惚れしてみる。
――――離したくねぇ
だから、俺は気持ちを伝えようと思った。
もし、うまくいかなくても俺はあきらめない。
いや……。
あきらめきれないんだろうな、きっと。
「なぁ…今、誰もいないよな?」
変な意味に思われたらしょうがないが、今度は邪魔されたくない。
「えっ?」
相川は、不審に思ったのか背中に回していた手を離し、少し距離をとり俺の顔をジッと見つめた。
「あぁ……。変な意味じゃなくて………」
俺、何やってんだろ……。
どうすればいいか分からなくなりとりあえず頭を掻いてたら、
「……ふふっ」
下がっていた視線を戻せば、相川が楽しそうに笑っていた。
その笑っている姿が可愛くて…。
ただ、それだけで俺の顔は熱くなる。
でも、丁度良い具合に夕日のオレンジ色が俺の赤くなった顔を隠してくれた。