オレンジ色の奇跡
頷いた後神崎先輩を見れば、呆然として口が半開きになっている。
「……………はっ?!ちょ、もっもう一回言って!」
聞こえていないはずはないが、あまりにも突然のことだったのか慌てながらも聞き返したが、
「二度と言うかっ!ボケェッ!!」
岩佐先輩はあたしを包んでいた片腕を退けさっさと席についた。
そんな岩佐先輩の様子を見てか、今度はあたしに詰め寄り、
「ま、舞希ちゃん、ホントに?」
「えぇ……はい…」
「…ま…マジで?!俺、スゲー嬉しいよっ!おめでとーっ!」
さっきまで呆然としていた神崎先輩の表情がパアッと明るくなり、あたしの両肩に手を乗せ何回もバウンドさせれば、
「祥也、てめぇ…相川に触んな」
岩佐先輩の凄みを利かせた声を聞くと神崎先輩は、あたしの両肩からパッと手を離し両手を上げホールドアップの状態になった。
それでも、ニッコリと微笑み、
「…舞希ちゃん、相川って呼ばれてるのイヤでしょ?啓輔に言っておくからね」
岩佐先輩に聞こえないように神崎先輩は呟いた。そりゃぁ、“相川”って呼ばれるより“舞希”って呼ばれた方が嬉しい。
でも、あたしから「舞希って呼んで?」なんて頼めない、それに、
「神崎先輩、良いんです。“相川”で」
「な…んで?だって、普通呼び捨てにしてほしいとか思うんじゃないの?」
「それは、思いますよ?呼ばれたら、呼ばれたで嬉しい。
でも…無理に呼んでもらっても嬉しくないですから」
「ははっ!特に、啓輔はそうだよね。ホントに素直じゃ」
「いい加減離れろ」
さらに凄みを利かせた岩佐先輩の声が降ってきたので神崎先輩は素直にあたしから離れた。