オレンジ色の奇跡
「はぁー‥」
小さなため息が聞こえ振り返れば梨海が腕を組んで立っていた。
「梨海?ため息なんてついてどうしたのよ?」
ふんわりと巻いた髪をふたつに結った片方を指でクルクルっとしながら、
「いいなぁっと思ってね……」
珍しく弱気な梨海を見たと同時に、良い恋してるんだな、と思った。
「梨海……。…………あっ」
梨海の後ろから誰か来ることに気づき端に寄ろうと声を掛けようと口を開く。
「梨海、端に寄ら………?!!」
スウッと静かに梨海の肩から男らしい腕が伸びたのが見え、
「何?ま……きっ!!」
伸びた腕が、梨海に絡み付く。
その男の顔がはっきりと見えたと同時に、梨海の顔が強ばったのが分かった。
「あんた誰よっ!!梨海を離してっ!」
黒髪に黒のフレームの眼鏡をかけ至って真面目そうな風貌の男は、ニヤリと笑っていたが、目が笑っていない。
「1人余っているみたいなのでお借りしますよ?
………良いですよね?梨海」