オレンジ色の奇跡
◆……
かろうじて話についていく相川、そしてその相川の服の裾を摘んでいる椎葉。
そういえば私服見るの初めてだな、とか思っていてもわけの分からない会話は続いていく。
「まぁ、いいわっ!空港まで乗せていって!」
話がまったく分からない。空港?七瀬はどこに行く気なんだよ…。
「……梨海、どこ行く気なの?国外逃亡?親とケンカ?何したのよ?」
相川が、思い当たる理由を淡々と述べていく。
前科に親とケンカして国外逃亡をしたことがあるのか?
「へっ?皆で行くのよ?」
「梨海、ちょっと待って下さい。
このお嬢さん方を乗せるのは許しますが、なぜ、この野郎共を乗せなくてはいけないんですか?」
七瀬が突拍子もないことを言い出した。
皆で行く?道連れなのかっ?
それになんなんだ、この男……。
七瀬の男だってことは分かったが、俺と祥也酷い言われようだな……。
まぁ、慣れてるって言えば慣れてるけど?
「耕太っ!何で気にするのっ?
あたしの友達の連れよ?しかも、車ってただのレンタカーでしょ?」
七瀬も七瀬で、俺たちより車かよ………。
レンタカーってことからすると、どっかの金持ちの家の息子とかじゃない普通の大学生か?
「はぁ……分かりましたよ。乗せればいいんですねっ!乗せればっ!」
「ありがとう、耕太」
満面の笑みでお礼を言った七瀬に連行される相川と椎葉。
「…おい、祥也――」
「啓輔……俺、頭悪くなったのかな?
さっき、日本語まったく理解出来なかったよ」
祥也が、一言も言葉を発しなかった理由も分かる。
「とりあえず、会計済ましてくる」
「会計ならもう済みましたよ?はやく、車に向かってもらえますか?」
「「あぁー。はぁ……」」
嵐のような速さで起きたことに正常に頭が働かないため気の抜けた返事しかできなかった。