オレンジ色の奇跡


◆……

「えっ?梨海ちゃん、リサとジョンもう帰っちゃうの?」

「うん、なんか用があるみたいよ?最近、忙しいらしくてね。
何が忙しいのか分からないけど」

「そ…なんだ。今日、帰るの…」

 無意識に心臓がビクンと跳ねる。

 別にジョンが悪いわけじゃないことは分かってる。
 分かってるけど、あの時は本当に怖かった。

 でも………よくよく考えてみれば、あの時ジョンは、

 “…………次は、舞希の番だよ”

 “…………少し我慢してね?”

 ――――もしかして

「岩佐先輩、昨日の放課後……いつからって言ったら変なんですけど……その……」

 「いつからいたんですか?」なんて聞くのもおかしいし……。

 日本語って難しい……。

「あぁ………っと、ふたりで笑ってただろ?あの時、俺廊下にいたんだよ」

 っていうことは……。
 ジョンは、廊下に先輩がいることに気づいてたってこと?
 だから、あたしの番だって……。

「どうした?車酔いか?」

 顔を上げれば心配そうな岩佐先輩が視界いっぱいに映った。



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