オレンジ色の奇跡
「車酔いじゃなくて……。
ジョン、先輩が廊下にいたこと知ってたんじゃないかなって思って…」
「…何でそう思うんだ?」
「ジョンがあたしに馬乗りになる前に、“次は、舞希の番だよ”と“少し我慢してね?”って言ったんです。だから…」
「例えそうだとしてもそれをジョンに絶対言うなよ?」
「え………?」
岩佐先輩は、あたしの肩に腕をまわし引き寄せ頭と頭をくっつけた。
「それは、ジョンの優しさだ。言ったら言ったでジョンのプライドが、な。……分かったか?」
「………はい」
あたしは、今までジョンの優しさに気づかなかった。
アメリカにいたときも、日本に来たときも……。
たくさんの優しさをもらったのにあたしは何もしなくていいのだろうか?
せめて、ジョンの5年を無駄にしてしまったことを謝りたい。
「……今、謝りたいとか思っただろ?そんな風に思うな。余計ジョンが傷つく。
それと、俺が今隣にいるんだ。他の男のこと考えるな…………舞希」
“舞希”………。
下の名を呼ばれただけで魔法にかかったみたい。
岩佐先輩のことで頭がいっぱいになり身体の力がスッと抜ける。
くっついていた頭をストンと先輩の肩に乗せれば、その心地よさに睡魔に襲われる。
「ふふ………先輩、“舞希”って言った…。でも、その使い方ずるいですよ?
それにあたし、もう……先輩の事で頭がいっぱ…い」
あたしは、睡魔に勝てるはずもなくそのまま眠りについた。