オレンジ色の奇跡


「あれ?優衣何やってるの?後ろからいっちゃいなよっ!」

「うっうっうっ後ろからっ?!!」

「うん。行け」

 トンッと優衣の背中を押した。

 顔を真っ赤にしながらあたしの方を振り返っていたため口パクで「はやく行きな」と合図を送る。

 コクッと頷き、小走りで神崎先輩の背中に抱きついた。
 会話は聞こえないけれど、神崎先輩は相当驚いているのが分かる。

 両脇が想い人の所へ行き静かになった。

 二人を見ているとあたしも想い人に抱きつきたいと思ったが結構先にいるのが分かる。

 あとちょっと歩いたら空港から出てしまう。

「……なんで先行っちゃうかな」

 “ばーか”だなんて声に出して言わないけれどせめて少しは待っててほしいとは思う。

 今から走っても間に合わないだろうと思い、あたしは空港の出口を背にし搭乗口を見つめた。

 ホントのこと言うとまだ、そんなに付き合っている実感なんてない。

 ただ、好きなときに好きなだけ“好き”と声に出して伝えることができるようになったことに少し実感してるくらい。

 そんなことかもしれないけど、あたしにとっては大きな進歩だ。


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