オレンジ色の奇跡
今日がいいきっかけになればいい。
大きく息を吸い大きく息を吐く。
新鮮な空気で肺を満たせばなんだか素直になれない自分が馬鹿らしく思えた。
素直になってやろうじゃねぇか。
もう一度息を吸い。
「舞希ーー!はやくしろー!」
誰がどう見ようとも関係ない。
こんな金髪不良野郎が大声で女の名前を呼んでるなんておかしなことかもしれない。
それでも舞希が喜んでくれれば俺は嬉しいから。
パァッと顔を上げ最高の笑顔で走ってくる。
俺もその笑顔に釣られるように一歩ずつゆっくりと前に進む。
だんだんと近づく距離。
「…っはぁ…はぁ……先輩…」
走った所為で少し頬が紅潮していた。
柄にもなく両手を軽く広げれば愛らしい笑顔を俺にくれる。
「……舞希」
広げた腕にそっと自分の身体を預ける舞希が愛しくて愛しくて……。
少し身体を離し舞希を見つめれば、
「…なんで先に行っちゃうのよ?」
「しょうがねぇだろ…」
「顔真っ赤だったから?」
「……るせーよ。ばーか」
舞希から視線を外せば「先輩が悪いのに」と呟き、舞希は身体を離した。
「……おい、舞希…」
「はい?何です…んっ!」
離れた身体を再び引き寄せ舞希の唇を塞いだ。