オレンジ色の奇跡
気づいたらもう9時をまわっている。
「…っ!やっばっ!」
急いで部屋に行き昨日の夜準備しておいた服を着れば、ピーピーっと洗濯機が鳴きだした。
洗濯機の蓋を開け、洗濯物をかごに移しベランダに向かう。
ベランダに一歩踏み出せば澄み切った青い空に眩しいくらいに輝きを放つ太陽があたしを包んだ。
12月半ばだというのに暖かな気候。
バサバサと洗濯物を振りながら手際よく干していく。
「あぁー、今日いい天気だな。最高のデート日和ってやつか?」
「うん。そうだね………えっ?」
声がしたほうに体を向ければ、タバコの煙を吐きながら空を見上げる晴兄の姿があった。
「………やっぱデートかー。相手は啓輔だろ?」
“啓輔”という言葉に心臓が反応する。
それに比例してなのか、太陽によるものなのか定かではないが顔が熱いことに気づいた。
「そ…だよ!」
それを隠すように晴兄に背をむけ再び洗濯物に手をかければ、
「……照れるっなよっ」
笑いを押さえきれていない声であたしを馬鹿にする。
「笑いたければ笑えば?」
あたしがそう言い放った途端軽快なチャイムの音がした。
「ほら、早く出迎えてあげろよ」
「言われなくても行くよ!洗濯物あとよろしく」
それだけを言い残しうるさい心臓と共に足早に玄関へと向かった。