オレンジ色の奇跡



 カチャと金属音と共にドアを押せば、そこには大人っぽい服装の岩佐先輩の姿。

「…おはようございます。どうぞ上がってください」

「…おう」

 なぜか岩佐先輩は緊張した面持ちで、いきなりあたしをギュウッと抱きしめた。

「え?!」

「……舞希」

 すごく弱々しい声であたしを呼ぶ岩佐先輩の背中に手を回す。

「……先輩、怖い?」

 本当は気づいてた。
 朔兄が岩佐先輩と電話をしていた時から。
 なんとなくだけど……。

「……認めてもらえるかな?」

 素直な思いを口にすれば、ますます認めてもらえなかった時のことを想像してしまう。

「大丈夫だ……。俺は舞希を離したりしない」

 きっと………、朔兄と晴兄なら認めてくれる。

「……うん」

「さぁ、行こう」

 初めての壁は、越えられるのかもしれない。

 というよりは、越えなければならない壁。
 この壁を越えられなければ次の壁に進むことが出来ない。

 “さぁ、行こう………”

 その言葉と共に強い意志を持って………。


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