オレンジ色の奇跡
一呼吸おいて岩佐先輩はお兄ちゃん達からあたしへ向き直った。
「……朔真さんと晴樹さんは、俺と付き合うことで危険な目にあう頻度が増えると考えてるんだと思う」
あたしの瞳の奥を見るような岩佐先輩の真っ直ぐな瞳から逃げたしたくなった。
あたしが危険な目にあうからお兄ちゃんも岩佐先輩も心配してるのは分かってる。
それでも目を逸らさずにはいられなかった。
「舞希は知らないと思うけど、俺達も啓輔も結構ヤンチャだったんだよね」
「サク、ヤンチャって柔らかく言い過ぎじゃねぇの?」
「いいんだよ。舞希も分かってるんだから。
舞希が日本に帰って来るために護身術を習ったのは知ってる。
優衣ちゃんの事があってから稽古とかしてるよね?」
「……うん。
あの時、日本に来てから全然稽古してなかったことを後悔したから。
お父さんとお母さんとの約束守らなくちゃって思って……」
あの時、岩佐先輩が来てくれなかったらあたしは………。
思い出したくない…。
全身の血の気がサーと引けていくのと同時に、いきなり岩佐先輩が立ち上がり、ソファーの横に跪(ひざまず)いた。
「俺の女だからと言って傷つけようとする奴らが出て来るかもしれない。
だったら俺は、命をかけてでも守ってみせる。
………だからお願いします。認めて下さい」