オレンジ色の奇跡
「……せん…ぱっ」
飛び付く様に岩佐先輩に抱きついた。
岩佐先輩は、しっかりとあたしを抱き留め小さな子供をあやすかのように頭を撫でる。
岩佐先輩の手は大きくて温かくてあたしの全てを包み込む気がした。
「泣き止めよ…ほら、目腫れたらこれから出かけられなくなるだろ?」
「……だってー嬉しい…からっ…。でも…お兄ちゃん達、ひ…どい!」
最後を強調し、お兄ちゃん達を睨み上げた。
「あ…いや……」
明らかに罰の悪そうな顔をしている朔兄は、助けを求めようと晴兄を見た。
「俺、知らねぇよ?サクが悪いんだろ?」
「朔兄も晴兄も悪いっ!」
「「………うっ…」」
言葉が詰まり苦笑いを浮かべる二人にあたしは出来る限りの笑顔を向けた。
「やり方は気に食わないけど…
お兄ちゃん、ありがとう」
「でもさ、ある意味、舞希の男が啓輔で良かったのかもな」
晴兄は、ソファーの背もたれに深く寄りかかり、天を仰ぐようにし呟いた。
「何で?」
天を仰いだままの晴兄に向かって問い掛ければ、朔兄が口を開いた。
「単純に、舞希を守れるから。普通の男だったら絶対守れないね」
「そうそう。
だってさ、サクと俺の妹だぜ?格好の獲物だろ。狙われないほうがおかしい」
「なぁ、啓輔……」
「はい、何ですか?」
「舞希を守ろうとする気持ちは嬉しい。
だけどな?啓輔自身も危ないことも分かっているだろう?
さっき、“命をかけても守る”って言ったろ。
絶対にそれだけはするな。
お前も命の重さとか、残された奴らの気持ちだって知ってる。
………分かったな?」