オレンジ色の奇跡
“命の重さと残された人の気持ち”
岩佐先輩も、朔兄も、晴兄も……。
三人の大切な人が死んでしまったということなのだろうか?
それとも、残された方なのか?
どちらにしてもあたしが、アメリカで呑気に生活している間に何かがあったということだ。
なんだろう、この曇った感情は…。
何も知らずに岩佐先輩の隣にいてもいいのだろうか?
「………分かりました」
岩佐先輩は、静かに呟いてあたしの頭を撫でた。
それだけで今はまだ何も知らずに隣にいてもいいのだと思ってしまう。
「それよりさ、いつから付き合ってんの?」
今だに天を仰いだままの晴兄が携帯を弄(いじ)りながら言った。
「舞希の機嫌がスッゲー良くなったのは……1週間くらい前だからそのへんじゃないの?付き合い始めたのは」
朔兄は、新聞ラックを漁(あさ)りながら顔も上げずに呟いた。
あたしは、そんなに分かりやすいのだろうか?
さっきの曇った感情から一気に恥ずかしい思いでいっぱいになってしまった。
「…そんなに分かりやすいのかよ……。まぁ、1週間くらい前だと思いますよ」
「やっぱりー?」
目当ての新聞が見つからないのか相変わらずラックを漁り、ラックに向かって「あれー?」を繰り返す朔兄。
「……もう、何も聞くことないですよね?」
そう言いながらおもむろに立ち上がる岩佐先輩に、今だに抱きついていたあたしも自然と立ち上がる。