オレンジ色の奇跡
「……え?」
「行かないのか?」
どこに?と一瞬思ったが、直ぐに行き場所が分かった。
「…行きますっ!さぁ、行きましょっ!」
「……分かったから、離れろ」
「……?………あっ!」
パッと背中に回していた両手を上げたのと同時に、申し訳なさと恥ずかしさで顔が熱くなるのが分かった。
「イチャつくなら舞希の部屋でしてねー」
やっと見つかった目当ての新聞に視線を落とし、コーヒーを啜(すす)りながら朔兄は片手を上げていた。
「部屋で好きなことしてもいいけど、声聞こえないようにしろよな」
天を仰いでいた晴兄は、ニヤニヤしながらキッチンへ向かいながら岩佐先輩の肩を2回ほど叩いた。
「そんなことしませんよ。朔真さんや晴樹さんじゃないんですから」
「「アハハハッ!!」」
ふっと鼻で笑った岩佐先輩を見たお兄ちゃん達は、顔を見合せ笑っている。
「ほら、行くぞ」
ズボンのポケットに片手を突っ込み、空いているもう片方の手であたしの頭を捕らえそのままリビングを出た。