オレンジ色の奇跡
岩佐先輩に続いて部屋に入りドアを背にしながら閉める。
部屋を見渡すと岩佐先輩の姿がない。
この短時間で、しかも広いとも言えないこの部屋に隠れたというのだろうか。
部屋の真ん中ほどにある白いテーブルに向かい一歩踏み出したが、後ろから男らしい腕が伸びてきてあたしを捕らえた。
「…きゃっ……」
捕らえられたのと同時に、岩佐先輩の額があたしの肩に降りてきた。
「……緊張したー」
長い、長いため息と共に吐き出された言葉は、家に来たときと同様弱々しいものだった。
「先輩も緊張するんですね」
クスクス笑いながら、肩に乗っている岩佐先輩の髪に触った。
「…あたりめぇだろ?
…………でも良かったー」
本当に安心した声で言うものだから、真正面から抱きしめたくなった。
岩佐先輩の両腕を左右に引っ張り隙間を作り、その隙間の中でくるりと半回転して岩佐先輩と向かい合い大きな胸板に自分の顔を埋める。
そのまま自分の腕を岩佐先輩の背中に回し抱きしめた。