オレンジ色の奇跡


「ははっ」

 目を細めている岩佐先輩は何だかあたしの反応を楽しんでいるかのようだ。

 まだ、息が上がった状態のあたしを支えるように抱きしめ頭を撫でる岩佐先輩。

「……ばっ…か」

「馬鹿とか言えるのか?気持ち良かったんだろ?」

「……そんなっ」

 意地悪く微笑みあたしの腰に回していた手をパッと離したのと同時に、あたしはその場に力なく座り込んだ。

「あれ?何で座ってんのかな?」

 足に力が入らないため立ち上がれない。そのことを知っているはずなのに岩佐先輩はあたしにその理由を言わせようとする。

「…先輩の意地悪っ!分かってるのにどうしてそういうこと聞くんですかっ!」

 なんだか今日に限って意地悪な気がする。下から岩佐先輩を見上げれば、少し困ったような顔をしていた。

「……いやさ、ああいうの初めてだったんだろ?
だから、嫌だったんじゃねぇかなって思ってさ……」

 座っているあたしと目線を合わせるように岩佐先輩はしゃがみ、あたしの頭に大きな手を乗せた。

「はぁー」

 わざとらしく大きなため息をつき、岩佐先輩の両頬に手を添え、

「……ああいうキスは、先輩としかしたくないです」


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