オレンジ色の奇跡
店内に入ると思っていたより客は少なくゆったりとした時間が流れている。
ふと、レジの上にある時計で時間を確認し、そのまま視線を下に下ろした。
レジの飾り付けが赤と緑……。これって、アレだよな?
気づいた後に少し焦りが出てきた。今日は、12月22日だからあと三日……。
ちらりと舞希を見るとちょうどよくアクセサリーの売り場にいる。
気づかれないように後ろから近付く。
「ぅわっ!?びっくりしたー」
びくっとした後振り返る舞希の手元を見つめると、舞希の手元には、小さなハートが付いている控え目なネックレスが握られていた。
「コレ可愛いですよねー」
と言いながらも名残惜しそうに元あった場所に戻り違う売り場に向う。
そんな小さい背中を見た後、そのネックレスに視線を戻し値段を見る。
舞希にしては高いかもしれないが、バイトをしている俺にとって賄(まかな)える額だ。
「………これがいいな」
そう呟いた後、これを付けて喜ぶ舞希の顔を思い浮かべ口元を緩める。
こんなちょっとしたことで、口元が緩むとは思わなかった。
最近の俺は、舞希のことを考えただけで顔が緩んでしまう。
昔の俺だったらありえないな、と心の中で笑ってみせる。